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リビング・ウイル

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2016.11.04

LW時代(5)

救急車を必要とする高齢社会で

一般財団法人 日本尊厳死協会
理事 白井 正夫

 

 これ、本当にあった話。
「入院するが、タクシー代がかかるので救急車をお願いします」
119番通報で救急車の不適切利用とされるこんな話は例外としても、出動件数の伸びがとまらない。消防庁が3月末発表した2015年の全国救急出動件数(速報)は約605万件(前年比1%増)、搬送人員約547万人で、ともに過去最高を記録した。
 消防庁が5年前、人口の高齢化で「2030年には609万件」という将来予測をしていた。数年のうちに予測値を超える勢いだ。
 日本人は救急車が大好き、というのは言い過ぎだろうが、充実した救急体制に国民の信頼、そして依存度は高い。ただ、事故、急病の発生は別にして、「高齢社会は救急車を必要とする社会である」ことは確かだ。高齢社会はいまや「超高齢社会」なのだから。
 これも、本当の話。
消防車製造の大手、モリタ(本社・大阪市)が十数年前、「消救車」なるものを開発した。救急出動が増えて救急車不足が社会問題になったころだ。1台の前部が救急搬送用、後部が放水ポンプを搭載した消防用スペースで、車体も前部が白、後部が赤色。必要に応じて使い分ける「消防+救急=消救車」だ

必要が生んだ「消救車」の発想

このグッドアイデアが実用化(千葉県松戸市で2005年に第1号車)されるまでが大変だった。法令による縛りである。「消防自動車にあっては朱色とし、その他の緊急自動車は白色」(運輸省令)だし、車両登録上、「消救車」という車は存在しない。
関係する総務省消防庁、国交省、警察庁が知恵を出し合った。規制緩和である。車体カラーはボディの白色を挟んで上下を朱色に、救急スペースが限られることから車両登録はあくまで消防車とし、「消防救急車」と呼ぶことで決着した。
東京都では「42秒に1回」、119番通報がかかる。一刻を争うのに救急車が出払っている場合があり、待機中の消防車や消防オートバイが第一次出動し、救急車の到着までをつなぐ。その件数は年10万件を超える。現場到着までの平均時間は救急車より消防車が1分以上早いという調査結果があり、数字が持つ意味は小さくない。
  話が変わるが、救急活動の将来を考えると、終末期医療の意思表明書によくある「私は心肺蘇生を希望しません」が悩ましい問題になる気がしてならない。119番通報で駆け付けた救急隊員が「DNR拒否宣言」と遭遇した場合である。
 財界人で知られるウシオ電機会長の牛尾治朗氏が体験を語っている(日本尊厳死協会会報159号=15年10月)。
 14年夏の夕方、夫人が心臓まひで倒れた。会社にいた牛尾氏に「救急隊員と話してください」と電話があった。尋ねたら、蘇生の可能性が難しいとわかったので、延命措置をお断りした。夫人が尊厳死協会の会員であることを伝えたら、隊員は「それなら結構です」と理解してくれた。すでに心臓の止まっていた夫人は病院にかけつけた家族に看取られ、静かに逝った。

DNR拒否宣言 隊員の前に出る日

 いま、いろいろな意思表明書(リビングウイルを含む)が発行されている。「心臓マッサージなど心肺蘇生」の希望の有無の項が入っている例が多い。何気ない項目だが、持つ意味は重い。
 在宅看取り医療に取り組む長尾和宏医師(兵庫県尼崎市で開業)が著書『「平穏死」10の条件』(ブックマン社)の7番目に「救急車を呼ぶ意味を考えよう」をあげている。
「救急車を呼ぶことは蘇生、それに続く延命治療への意思表示」だから、その意味をシミレーションしてから呼んでください、と。蘇生措置で息を吹き返した後は「延命治療」に移行する。始まった延命措置を途中でやめることは難しい状況があるのも現実だ。
「救急車を呼ばない」人とわかっていても、急に倒れれば救急車を呼ぶのは当然のことだろう。駆け付けた救急隊員の前に「DNR拒否宣言」が出てきたら…。超高齢社会と意思表明書を思うと、家族にも、隊員にも難しい問題が身近に起きる日は遠くない。

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